2/04/2007

アリソン 第一章 「アリソンとヴィル」(艾莉森和威尔) part.5

  「ロクシェは、君達がいろいろな国からきているように、大陸東側にある十六の国と地域の集りだ。スー・ベー・イルは、西側の二つの大きな王国と小さな国のいくつかがまとまったのだと覚えておこう。幼年学校では、ロクシェの歴史しか勉強しなかったけれど、今度からは河向こうとの関わりも重要になる」
  「戦争ですか?」
  誰かが聞いて、教師は頷いた。
  「ああ、そうだーー」
  ロクシェとスー・ベー・イル。両国の交流の歴史は、つまりは戦争の歴史になる。
  最古の文明が生まれた、世界暦一桁年の古代。巨大な山脈と河に隔たれ、東西はまったく交流のない“別の世界”だったとされている。
  やがて、文明が生まれ、国が生まれ、いくつもの戦争を経て、東西はそれぞれが一つの巨大帝国としてまとまった。そして、今度は帝国どうしの戦争になる。こうした東西帝国の大戦争は、数十回にもわたったと、太古の歴史書に残る。
  河向こうを攻め滅ぼすことは、やがて東西皇帝の野望になっていた。そして地形的な要因から、そのすべてが失敗に終わる。一時的にルトニ河を超え、こぶのように領土を広げたこともあっても、、すぐに河まで押し戻された。
  そして千年近い時間が流れる。かつての大帝国はバラバラになり、小さな国がいくつも生まれた。それらは数百年間、東西の中で、消滅や拡大を繰り返す。
  中世に入り、王と騎士達の時代がやってきた。四百年ほど前のある時、西側の王国が連合を組んだ。かつての皇帝達がなしえなかった夢を果たそうと、東側が戦乱に明け暮れている隙に攻め込んだ。
  東側は自分達の憎き河向こうを迎え撃った。ルトニ河を挟んで、だらだらとした攻防が百年以上続く。やがて世界中に凶悪な伝染病が蔓延し、うやむやの内にこの戦争も終わった。その国境線が、ルトニ河や中央山脈を越えて書き換わることはなかった。
  銃砲が使用される近代へと入り、東西それぞれの中で、諸国は領土争奪戦を繰り返した。しかしその中で、双方とも一つの事実に気づく。
  “もし河向こうが団結して、こちらに攻め込んできたらどうなるだろうかーー?”
  やがて西と東は、時期と理由を同じくして、それぞれが一つにまとまるという合理的な選択をした。古代の東西の帝国は、連邦と連合という形で再現された。
  そして、今度は東西の睨み合いが始まる。
  「百三十年続いた睨み合いは、結局殴り合いになった。ロクシェとスー・ベー・イルとの間で戦争が起こったんだな。これが大戦争だ。勃発が何年だか分かる人はいるかい?」
  「三二五二年。ちょうど三十五年前です。」
  「そう。この戦争は、近代以降初めて両国が本格的に戦った、そして最大のものだったんだ。主に戦場となったのは、」
  教師は、黒板のジャガイモ、ルトニ河の河口近くにX印をいくつも描く。
  「北の地方。ルロ国とかニャシャム共和国とかがある地域だ。河が太くて一本になっている辺りだった。河近くの土地を取ったり取られたりして、たくさんの犠牲者が出たし、住む村を失った人も多かった。でも、五六年にスー・ベー・イルの軍隊は意表をついて、もっと南で攻め入ってきた。どこだか分かるかい?」
  生徒たちが沈黙して、教師は山脈と河の合流地点、その東側に円を描いた。


  “洛克谢就如同你们来自许多不同的国家一样,是由大陆东侧的十六个国家和地区组成的。斯贝伊尔是由西侧的两个大国和一些小国家组成的。这些要记住。幼年学校的时候只要学习洛克谢的历史,不过现在开始,和河对岸的关系也是变得重要了。”
  “战争吗?”
  不知道谁问了一句,老师点了点头。
  “嗯,是的--”
  洛克谢和斯贝伊尔。两国的“交流”的历史,倒不如说是战争的历史。
  在最古老的文明诞生,世界历只有个位数的古代。相隔着巨大的山脉和河流,东西两地可以说是完全没有交流的“不同的世界”。
  不久,文明诞生了,国家诞生了,经历了无数的战争,东西各自形成了一个巨大的帝国。然后,变成了帝国之间的战争。太古的历史书上记载着,这样的东西帝国的大战争,持续了数十次。
  消灭河对岸,渐渐变成了东西方皇帝的野心。然而因为地形这个主要原因,全部都以失败告终。虽然也有一时越过鲁托尼河,扩张了领土这样的事,但很快就被打回了河边。
  接着又过了近千年的时光。原先的大帝国分裂了,诞生了许多小国家。东西两地在数百年间,重复着消灭与扩张。
  进入了中世纪,君王和骑士们的时代终于来临了。大约四百年前,西边的王国组成了联合。原先的皇帝们为了达成没有实现的梦想,趁着东部战乱的时机发起了进攻。
  东部立刻把自己的争端搁置在一旁,迎击憎恨的河对岸王国。隔着鲁托尼河,持续了一百多年的冗长的攻防战。随着世界上凶恶的传染病的蔓延,这场战争也就不了了之了。那条国境线也没有超过鲁托尼河和中央山脉,没有任何改变。
  进入了使用枪炮的近代,在东西两方各自的土地中,各国也在重复着领土争夺战。不过在这个过程中,双方都注意到了一个事实。
  “如果河对岸团结起来,向这里进攻的话该怎么办--?”
  于是东西两方差不多是在同一时期,由同一个理由,各自做出了统一为一个整体的合理选择。古代的东西帝国,以联邦和联合的形式再现了。
  然后,这次是开始了东西两方的敌对。
  “持续了一百三十年的敌对,结局就成了对战。洛克谢和斯贝伊尔之间发生了战争。这就是“大战争”。有人知道是哪年爆发的吗?”
  “三二五二年,正好是三十五年前。”
  “对,这场战争,是近代以来两国首次真正意义上的交锋,也是最大的一场。只要的战场是在。。。”
  老师在黑板上的马铃薯上,鲁托尼河口附近画了很多X形印记。
  “北部地方。洛尔国,尼亚夏姆共和国等所在地区。河在这里附近汇成一条粗壮的主流。河附近的土地被夺过去夺过来,牺牲了很多人,也有许多人失去了居住的村庄。然而,在五六年,斯贝伊尔的军队出人意料地攻向更南的地方。知道是哪里吗?”
  学生们都沉默着,于是老师在山脉和河的合流处的东侧画了一个圈。

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