2/11/2007

アリソン 第一章 「アリソンとヴィル」(艾莉森和威尔) part.8

  「ロクシェと、スー・ベー・イルと。どっちが人間の“親”だと思いますか?」
  教師は、五秒間黙った。そして、よどみなく答える。
  「それはもちろん、ロクシェだよ。私たちの方が、いろいろな面でずっと成熟しているのは間違いない。より多くの人口を抱えているし、貧しい国や地域も河向こうに比べるとずっと少ない。それだけ多くの人が幸せに生きているってことだ。歴史的に見ても、優れた芸術や発明は、ほとんどがロクシェで生み出された。私や君達は、ロクシェの市民 だってことを、胸を張って誇るべきだと思う。私達や私達のご先祖様が、自分達が格上だと思いこんでいる河向こうの連中より、ずっと優れているってことも、君達はそれを学ぶために学校にきているんだし、先生達はそれを教えるためにここにいるーー」
  流れてくる教師の声を聞きながら、ヴィルは本を読み進めていた。一度だけ、動いた影に合せて座る位置を変えた。
  少し風が吹き始めて、髪を揺らす。同時に、ヴィルの左耳に、虫が羽ばたく低い音が聞こえた。ヴィルは、左耳の辺りを手で払った。
  「?」
  それでも止まない音に、ヴィルは栞を挟んで立ち上がった。木下から出て、空を仰ぐ。
  「先生あれ!」
  音の生体に気づいた一年生が、それを指さした。みんな一斉に、空を見る。
  それは、二機の小型飛行機だった。機首で回るプロペラと、胴体の上と下についた二枚の翼が分かる。下の翼には、がっしりとした着陸脚が突き出している。
  二機は、かなり低いところを並んで飛び、校舎上空をかすめるような進路できていた。蒼い空を背景に,一定のエンジン音を鳴らしながら悠々と。
  「凄い。本物だ。」
  一年生達がはしゃぎ出した。大都市間で郵便や旅客飛行が始まったとはいえ、実際に本物の飛行機を見たことがある人間は、まだ少ない。青空授業は中断になり、教師共々木々の下から抜け出て、近づいてくる飛行機を見上げた。
  「みんな、胴体を見てごらん。“セロンの槍”が描かれている。あれはロクシェ空軍の飛行機だ」
  少し興奮した教師が言ったとおり、機体左側面には、一本の槍が描かれていた。
  槍の色は黒。尖った先端には、矢尻のような返りがあった。上の方には、握りのような太い部分があって、末端左右に矢羽のような赤い山切り紋様がある。
  “セロンの槍”--そう呼ばれる、ロクシアヌーク連邦の制式紋章。
  大昔から土器に刻まれていた模様で、古代帝国では、“魔を払う槍”として、歴代皇帝の紋章として使われた記録が残る。帝国崩壊後も生き残り、王や騎士が持つ盾の中央に刻まれたり、軍旗に描かれたりを延々繰り返してきた。ロクシェ成立後は、統合のシンボルとして国旗の左端上に描かれている。
  「空軍か......」
  ヴィルが小さくつぶやいた。
  二機は、並んだ二本の槍を生徒達に見せびらかすように、ゆっくりと飛ぶ。胴体には席がそれぞれ二つあり、開放式の操縦席に、飛行帽をかぶった飛行士の頭が見える。
  一年生達は、飛行機に向けて大きく手を振った。やがて一機が、応えるように翼を上下に揺らした。次いでもう一機も。歓声が沸く。校舎では珍しいものを見ようと、いくつかの教室の窓に生徒達がへばりついていた。


  “洛克谢和斯贝伊尔。你认为那个才是人类的‘祖先’?”
  老师沉默了5秒,然后毫不犹豫地回答道。
  “那当然是洛克谢了啊。我们在很多方面都要成熟的多,这是无可置疑的。我们拥有更多的人口,贫穷的国家和地区也比对岸少得多。就因为那样很多人生活得很幸福。即使从历史的角度看,优秀的艺术和发明,也大多都是在洛克谢产生的。我觉得我和你们都应当为身为洛克谢的市民而感到骄傲和自豪。我们和我们的祖先都要比那些一直认为自己高人一等的对岸的家伙们优秀得多。你们就是为了学习这些东西而来到学校的,老师们也为了教授这些东西而在这里的——”
  威尔一边听着老师传过来的声音,一边继续读着书。只有一次为了配合移动了的树荫而换了一下坐的位置。
  微风开始吹起,轻轻的摇动着他的头发。同时,威尔在左耳处听到了昆虫摆动翅膀似的轻微的声音。他用手在左耳附近拂了拂,想敢走可恶的虫子。
  “?”
  然而声音并未停止,威尔夹上书签站了起来。从树下走出来,仰望天空。
  “老师,在那里!”
  发现了声音的来源的一年级生,用手指着那里。大家一齐望向天空。
  那是两架小型飞机。可以看得到在机首转动的螺旋桨和机体上下的两枚机翼。在下翼上伸出结实的着陆支架。
  两架飞机在非常低的空中并排飞过来,似乎想掠过校舍的上空。在湛蓝的天空下,固定的引擎声听来十分悠闲。
  “好厉害。是真的啊。”
  一年级学生闹腾了起来。虽然在大城市之间已开始有邮政和民航飞行,不过真正看到过实际的飞机的人还很少。中断了户外授课后,和老师一起从树下面走出来,看着渐渐飞近的飞机。
  “大家快看机身上。画着“赛隆之枪”。那是洛克谢空军的飞机。”
  就如有点兴奋的老师所说的,在机身的左侧面,画着一支长枪。
  枪的颜色是黑的。在尖尖的枪头上生有箭簇似的倒刺。在其上方,有着用来握的比较粗的部分,末端左右部分是箭羽似的红色V字形的样子。
  “赛隆之枪”——被这样称呼的,洛克希阿努克联邦的国徽。
  有记录记载,那是很远古时,刻在陶器上的图案。古代帝国时期,曾作为“驱魔之枪”,被用作历代皇帝徽章。帝国崩溃后,它仍然保留了下来,被刻在君王和骑士的盾上,或者画在军旗上,如此延续下来。洛克谢成立后,它被作为统一的象征画在国旗的左上角。
  “空军吗······”
  威尔小声嘟囔道。
  两架飞机似乎是要像学生们展示那两支并排着的长枪似的,很悠闲地飞着。机上各有两个位子,在开放式的驾驶座上,甚至能看到带着飞行帽的飞行员的头。
  一年级生们向飞机用力地挥着手。随后,一架飞机似乎是做出回应似的,上下摆动机翼。接着另一架也这么做了。顿时欢声沸腾。好多教室里,学生们都紧贴着窗户,为了看看这在校舍里很难看到的东西。

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